公務員の職務経験は、民間企業の仕事から遠いと見做されることが多いように思います。
しかし、公務員が培ってきたスキルで民間企業で生きるものもあります。
特に差別化が重要な現代にあっては、むしろ公務員という特異なキャリアを歩んできたからこそ有利な点もあるのです。
それでは、民間企業で生かすことができる公務員のスキルにどのようなものがあるのでしょうか?
1.社会人基礎力が高い
人手不足が深刻化する中、様々な業界で人材レベルの低下が問題になっています。
従来、公務員の転職にあっては実務経験のなさが障害になってきましたが、現状、民間企業では採用してみたものの社会人としての資質に問題があるケースが増えているのです。
このような状況にあって、公務員は真面目な方が多かったり、公務員試験を乗り越えられていたりと、社会人基礎力の高い方が非常に多いのです。
この点は民間企業にとって大きな魅力になります。
2.不条理への耐性が強い
昨今、社会全体のホワイト化が進んでいます。これ自体はもちろん素晴らしいことですが、社会や企業から一切の不条理がなくなったかと言えば、そのようなこともなく、社会の至るところに古い時代の残滓が残っています。
公務員組織は未だに古いところもあり、結果として公務員の方は古い時代からの不条理への耐性が強いと期待されます。
この点、理想と現実の狭間で会社組織を運営していかねばならない民間企業にとって、不条理への耐性が強い公務員人材の魅力度は相対的に高くなっていると言えます。
3.調整力
公務員の強みのひとつとして、調整力が挙げられます。
利害関係者が多いゆえに、様々な人達との調整や、根回しが不可欠であり、鍛えられています。
現在では古臭い組織の習わしのように捉えられるところもありますが、実はどんな組織においても調整力は非常に重要です。
昨今は短絡的に結論を急ぐところがありますが、複雑で難しい問題になればなるほど、問題を丹念に解きほぐし、様々な関係者と合意形成を積み重ねていくことが重要です。
この点で、公務員経験者には強みがあると言えます。
4.文章力
公務員は日常的に公文書や報告書を作成することから、知らず知らずのうちに文章力が鍛えられています。
一般的な民間企業の方と比べると、文章力が高いだけでなく、面倒くさがらずに文章を書ける方が多いです。
現場オペレーション中心の仕事であれば、あまり文章を用いずに仕事を進めることができますが、複雑で難しい問題になればなるほど、前述した調整力と相まって、問題を言語化し、様々な利害関係者と調整したり、上役の判断を仰いだりすることが必要になります。
5.チームプレーが得意
公務員の仕事は、個人で完結することが少ないように思います。
そもそもの仕事が大きいため、ラインで対応したり、他の部署を巻き込んだり、社外の関係者も交えて、仕事を進めていきます。
したがって、個人プレーよりはチームプレーが磨かれていく傾向が強く、プロジェクト型の業務などには馴染みやすく、機能しやすいと考えています。
また、チームプレーの過程でいわゆる「報連相」も鍛えられており、コミュニケーション能力も高いと言えます。
一般的にはコミュニケーション能力と言うと、明るく場を沸かせられるようなコミュニケーションを想像するかもしれませんが、公務員は物事を前に進めるために必要なコミュニケーションを確実に行うという意味でのコミュニケーション能力が磨かれています。
6.キャッチアップ力が高い
特に地方公務員は、土木・教育・福祉・医療・交通・税務など様々な部署を2年~5年単位で異動し、そのたびに短期間で新しい担当業務を習得することが求められます。
このように全く異なる分野に頻繁に異動することは民間企業では少なく、公務員の新しい業務へのキャッチアップ力は相当高いと言えます。
上述のとおり、公務員が民間企業で強みを発揮できるスキルを説明しました。
人材の多様化が叫ばれる昨今、公務員の方の職務経験は民間企業の方と少し異なっており、だからこそスキルセットとして希少性があるとも言えます。
一方で、公務員の方にこういったスキルセットがあるということを民間企業の人はほとんど理解していません。
したがって、転職者はスキルセットにあてはまる自分なりの経験を事前にまとめて、書類や面接でしっかりと相手に伝えていくことが必要です。